墓石屋さんに、異業種乱入
2021/08/02
安いだけはダメなんですけど
異業種への参入
兵庫県はコロナの影響を受けて蔓防がこの2日から適用に成りました。実感としては蔓防も緊急事態も変わりなく感じて居たのですが、飲食店は今回の措置はかなり堪えた様です。早々と8月いっぱいの休業を宣言するお店が多いです。我々も大変ですが、飲食店の方は特に、個人で人を雇っているところは本当にしんどいみたいです。だからと言って食事に行くわけにも行かず、唯 時が過ぎるのを待つしか有りません。
終活関連業界でも変化が有ります、全国的なお仏壇チェーン店が墓石業界に参入してきました。しかも価格破壊も良いところです。墓石自体の販売はしません、唯墓石は誰かが亡くなって納骨と成ると墓石(竿石に名前を入れるより霊標にに彫ることが多いです)に名前を彫ります。その後、満中陰明け、1周忌、三回忌とそれぞれの都合で納骨をします。墓石屋さんに頼むと、見積もり、契約、原稿確認、施工、納骨式と成ります。一番大事なのが納骨式でお寺さんが来る場合、焼香セット又、雨や日差しの関係テントを張ったりします。お墓を開き、喪家からお骨を預かり、中の状況を見て骨壺のまま、もしくは晒に移してと言う事が納骨式では、大変重要に成ります。神戸では霊標に名前、戒名を彫るのに7万~8万円が相場でしょうか。
大手仏壇チェーンは、3・85万円で受けます。安くして後の仏壇を売る、またはそれに付随する仕事が取れればと考えて居るのでしょう。ちょっと前まで4・5万円と聞いたのですが、さらに安くなっています。墓石屋さんでは太刀打ちできません。内情を語れば墓石、霊標を彫る作業だけです。下請けの職人に石彫りの作業だけを頼みます。石に名前を彫るだけなら現場に機械を持っていけば1時間ほどで作業は終わります。
唯、納骨で一番大事なのは段取りです、トラブルが絶えません。
職人の立場から、霊標に名前を彫るなら、一人で出来ます。但し竿石(墓石本体)と成るとそうは行きません、場所にも依りますが下手をすれば一日仕事に成る事も有ります、場合に依れば受けない事も有ります。
喪家は当然何も知りません、納骨の段に成って墓石が開かないことが有ります。神戸では震災後、安全のため墓石をコンクリートボンド等で固定している場合が有ります、又お寺さんを呼んだ場合、焼香器も鈴も有りません。事前に解っていれば引磬(手持ちの鈴の事)も持ってくるのでしょうが、普通は墓石屋さんが段取りします。
怒って帰るお寺さんも居るそうです、怒って帰るというのも如何とは思うのですが、唯、問題は喪家とお寺さんだけです、どうして良いかどうするのかお互い解りません。近くの墓石屋さんが泣きついて来られて困ったと聞いています。
実際私も経験しました、お寺さんとしてお世話をさせて頂いた喪家がその大手仏壇チェーンに墓石の名前彫りを頼んだと聞きました。当然納骨はだれも来ないだろうから念の為にと事前に確認に行きました、お墓は開きました、唯、先に入って居るお父さんのお骨は晒に入れられていたので朽ちて居ます。ここに重ねて納める訳には行きません、晒を準備しました。
当日は暑かったので、私の手配で墓石屋を呼び、テントを張ってなんとか事無きを得ました。でも本当はお寺さんが段取りするのは如何なものかとは思いますが。
昔お葬儀業界もネットブローカーが参入して来て、同じようにお葬式のトラブルが多かったのを覚えています。ユニクエスト(小さなお葬式)も何も解らずお葬儀を請け負い社会問題にも成りました。今はアルファークラブ(大手互助会)が介入した事に依ってその手のトラブルは有りません。
異業種が参入して安くなる、便利になる事は良い事です。唯、参入される側も真剣に受け止めないとその業界の形が大きく変わります。先ほどのお葬儀業界も安易にネットブローカーに飛びついた事で、直葬(式を挙げずに直接火葬する式)がいまや当たり前の様に成っています。ニーズが有るからそれは仕方が無い事なのでしょう。それでも大切なのは納骨も墓石に名前を彫って骨を納める事では有りません、葬儀も遺体の処理だけが大切なのでは有りません。無駄な事はしなくて良い、しかし故人を偲ぶのに、先祖を思うのにもう少し時間と手間はかけても良いのでは、と思います。